- 大学院“博士”課程修了後の進路(就職・給料・結婚など)
- 大学院“修士”課程修了後の進路(就職・給料・結婚など)
- 東大・京大はちょっと違う…
大学院、特に博士の学生は「このまま研究を続けていっても大丈夫なのか…」という不安に押し潰されそうになりながら、日々研究を頑張っていると思います。
その不安をさらに煽るかのような「博士が100人いる村」という、にわかに信じがたい童話が語り継がれていることも既にご存知ですね(製作者不明…)。
要約すると、学位取得後の進路を調査した結果を童話風にまとめた動画です。。
ちなみに、「研究者は辞めておけ」っと言うつもりはありません。
元ポスドクの私は博士進学を推奨します!
とはいえ、綺麗事だけではないのも事実です。
本記事では「博士進学はあり or なし」という話ではありません。
私が大学院博士課程そしてポスドク時代に見てきた同僚の研究者の状況や後輩の博士学生たちのその後の進路がどうなったかなど、“具体的な博士のリアル”をご紹介したいと思います。
※今回のお話はあくまで私が見たリアルであり、すべての博士の方がこうである、というわけではないので参考までに留めておいてください。
大学院博士課程修了後の進路(就職・給料・結婚など)
結論から言うと、博士修了者の多くはちゃんと就職できていて、結婚している割合も高めです。
ただし、年収的には一般企業で働く同世代よりは低い。。
また、博士号を取得した翌年に新卒という形で研究職(任期付き)に就く人は多いですが、その後任期切れで無職になることも珍しくはありません。
研究職は就職できれば安泰という世界ではなく、研究成果(論文)を出し続けなければ就職先すら決まらない厳しい世界です。
さて、私が博士課程そしてポスドク時代に見てきた同僚の研究者の状況や後輩の博士学生たちがその後どうなったかをご紹介したいと思います。
ポスドク・博士研究員のリアル
大学名は伏せますが以下の例は中堅私立大学が舞台です。
東大や京大の博士たちとは全く状況が違うと思いますので、そのあたりはご了承ください。
※東大、京大は博士のレベルがまったく違います…。
(既婚 子供なし)
- 学位取得後に指導教官の推薦により他大学でPD(任期3年)として勤務し、任期切れ直前に他研究所に技術員として転職(この時の手取りは月収は18万くらいだったそうです)。
- その後、元指導教員の推薦により他大学のPDに転職し、そこで学振をとることができ任期切れの不安を抱えながら研究しています。
- 推定給与:30万円/月
(既婚 子供なし)
- この方はちょっと特殊で、大学院のころから指導教員がほとんど書き上げた論文をBさんをFirst authorとして投稿し次々と実績を積み、学振で海外特別研究員となりました(マジ許せねー)。
- しかし帰国後は就くポストがなく元指導教員の推薦により出身校の大学事務員に就いています。
- 推定給与:15万円/月
(既婚 子供なし)
- この方はかなり優秀。私と同期で同プロジェクトにPDとして採用されていましたが、そのプロジェクトの先行き不安から任期5年にもかかわらず、任期2年を残して国立研究所に公募があったポストに転職していきました。
- 教授までスムーズにのぼっていくと思われる方です。
- 推定給与:36万円/月
※趣味でWebアプリの開発をしていたため副収入もありそう。
(既婚 子供なし)
- 博士課程は最短で3年ですが、この方は5年目で博士号を取得した苦労人。
- 現在はPDについているようですが、PDになってから1本も査読付き論文が出ていない様子であるため、任期が切れるとどうなるかわかりません…。
- 推定給与:30万円/月
おや?
こうしてみると、みんな結婚していますね。
ただし、博士号を取得したにもかからわず、パートの主婦の方と同じ職についている人がいるのが現状です。
「なぜ就職しないのか?」と思う人もいるでしょうが、ポストはなくても研究を続けたい(というか研究を続けざるを得ない…)という事情があるからでしょう…。
【おまけ】博士課程に進学した学生の進路
せっかくなので大学院博士課程に進学したけど学位取得に至らなかったケースの学生についても触れておきます。
※あくまで私が見てきた博士課程の学生であり、すべての方がこれらの例に当てはまるとは限りません。
- 極めて優秀な学生だったんですが…。
- しかし、D1の頃に指導教員との仲が悪くなってしまい研究室に顔を出さなくなった結果、指導教員は単位を認めずD2に進級できない?状況になってしまったため自主退学して、その後はわかりません…。
- 指定給与:????/月
- 主張は強い学生であったものの、修士課程のころから研究に進展があまり見られずそのまま博士課程へ進学しましたが、博士2年の頃に退学。
- 噂によると就職が決まっための自主退学だったようですので、そもそも博士に進学した目的は就職活動を続けるためだったのかもしれません。
- 指定給与:????/月
(未婚 子供なし)
- 真面目で一人黙々と作業をするタイプの女子学生。
- 博士課程へ進学し、D3のころには学位論文の執筆も取り組み始めようとしていましたが、そのころまでに査読付き論文が一本もでておらず学位申請条件を満たさないため、D3で単位取得退学しその後、製造業者の工業に就職しました。
- 推定給与:22万円/月
(未婚 子供なし)
- 修士課程の頃に、研究というよりは開発系の作業をメインに進めており、一般的な大学院生をもつべきスキルを持たずして、そのまま博士課程に進学。
- 自身の研究テーマもあやふやなまま所属する研究プロジェクトの働き手としての雑用をこなしている状況が続き、さらに奨学金の借入や大学院の学費、そして博士号取得が極めて難しい状況にあることを考えた結果、D2にあがる前に自主退学。
- その後、就職先が決まっているわけでもなかったため、元指導教員の推薦で大学事務の嘱託職員として勤務しながら、引き続き研究活動をしている様子です。
- 推定給与:15万円/月
おや?
こうしてみると博士号取得に至ったケースがありません…。
大学院博士課程に進学したということは、その期間の学費もかかっています。国立大学でも年間50万円以上、私立大学だと年間100万円前後の学費を払う必要があります。
さらに生活費を考えれば、博士課程3年間で400~500万円のお金が必要になります。
経済的に考えても「私は研究者になる!」という決意がなければ博士課程の3年間をやり抜くモチベーションを維持することが難しいかもしれません。
また、博士号取得は自身の努力と能力は当然必要ですが、それに加えて指導教員との関係性も重要です。
実際、指導教員との関係が上手くいかないと、Eさん、Gさん、Hさんのように博士課程の途中で学位取得を断念せざるを得なくなることも珍しくありません。。
※Webライターは大学院生におすすめの働き方です。
補足事項
東大や京大の大学院博士課程の場合はまったく状況が異なります。
東大出身の同僚や先輩に話を伺うと、
✓理系分野なら大学院へ進学するのが普通。
✓学位取得に対する意識が強い。
✓進学に不安を感じる人はほとんどいない。
という感じのようです。
理系進学者は、研究者を志している人が多いんだと思います。
また、「優秀な学生ほどさっさと就職していく」らしいです。
以上です。
「博士はいろいろと大変だ…」と思うことがいっぱいありましたが、今思えば「賢く生きていなかったからだ」と過去の自分に伝えたいです。
博士課程に進むリスクをあらかじめ考えたうえで、「大学院を利用する」という気持ちを持っていれば問題ありません、
学位取得までがんばりましょう!