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【博士が100人いる村】デマ!? 物理系の元理系女ポスドクが実体験を含めて考察

【博士が100人いる村】デマ!? 物理系の元理系女ポスドクが実体験を含めて考察
YouTubeで「博士が100人いる村」という恐ろしい動画を見てしまいました。これって本当なんでしょうか??

大学院生、博士学生であれば知らない人はいませんよね。

この動画の中で最も気になる問題は「100人の博士のうち8人は行方不明or死亡」とされているところ…。

 

ネット上では“デマ”という意見もありますがあながち嘘ではないのでは?」というのが、博士を経験しその後にポスドクとして大学で研究員の職に就いた私の意見です。

ただし、ポスドクや会社、他分野へ就職した割合をどのように調査できたのか、という点については疑問が残るのは確かです。

さらに、”行方不明 or 死亡”と言うのはちょっと言い過ぎ。

単純に“連絡が取れない or 博士後の進路を確認できない”というのが正しいはず。だって、私自身が生きているし、博士卒後の進路調査をされたこともありません。

本記事では、元ポスドクという経験から「博士が100人いる村」がデマなのか、どれくらい信ぴょう性があるのかを具体来なデータを基に考察してみたいと思います。

なお、本記事の最後では博士のための就職エージェントを紹介しています。

ぜひ参考にしてみてください。

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【博士が100人いる村】はデマなのか、それとも真実?

この物語は製作者が不明という点が不気味ですが、実はちゃんとした根拠となるデータに基いたお話で構成されています。

その基となるデータが文部科学省が公表している「学校基本調査」です。

「学校基本調査」とは、文部科学省が毎年実施している進路調査です(以下参照)。

文部科学省は,学校教育行政に必要な学校に関する基本的事項を明らかにすることを
目的として,標記調査を昭和23年度より毎年実施しています。

例えば、2019年に公開された資料が「令和元年度学校基本調査」です。

つまり、「博士が100人いる村」はまったくの“デマ”というわけではないということ。

では、「学校基本調査」で報告されている“博士たちの進路”についてチェックしてみましょう。

博士が100人いる村の元ネタ:博士課程修了者の進路調査

「令和元年度学校基本調査」の博士課程修了者の進路調査結果を見ると、約7割の博士は就職していることが確認できます。

博士修了者の就職率は69%@H31

引用元:令和元年度学校基本調査

※博士課程修了者には満期退学者(学位を取得しない単位修得者)数も含まれています。

「令和元年度学校基本調査」から内容を抜粋すると、令和元年度(平成31年3月)の博士課程修了者数は15,578人であり、そのうちの69%にあたる10,756人が正規雇用の職に就いています。

「博士は就職できない」は嘘!?

大学院に進学すると「博士は就職できない」と聞いたことがあるはず。でも、実際は約7割の博士が正規雇用職に就いていることがわかりますね。

つまり、博士は就職できないという話は信用しなくていいでしょう。

とはいえ、就職していない31%の博士たちはどうなってしまったのでしょうか。

こちらも「令和30年度学校基本調査」による調査結果を抜粋してみます。

引用元:令和元年度学校基本調査

「令和30年度学校基本調査」によると、1.3%がさらに進学し、5.4%が一時的な仕事に就き、残りの17.3が進学も就職もしていない者(無職?)と報告されています。

1.3%+5.4%+17.3%=24%…?!

就職率が69%、未就職者が24%、合計93%…??

あれ??

7%の博士の行方が不明です💦

H31だけでなく、過去の調査報告においても毎年7~8%の博士出身者の行方が分からなくなっています…。

動画の根拠が見えてきましたね。

これが「博士が100人いる村」の中で問題視されている“8%の博士”たちです。

令和元年に行方不明になった博士の数

➪ 1,090人

※15,578人の博士課程修了者の7%に相当

ただし、学校基本調査で進路を追えなかった7%の博士が”自殺”したという根拠はどこにもありません。

「100人の博士がいる村」の中では”自殺”をほのめかす内容で締めくくられていますが、単に連絡が取れずにその後の進路が追えなかっただけという可能性もあるでしょう。

とはいえ、まったくの嘘という根拠もないのも事実。。

「博士が100人いる村」で語られる7%の博士たちは何処へ…

文部科学省が毎年調査している「学校基本調査」の報告書を見ると「毎年7~8%の博士たちのその後の進路を追うことができていない」ということが確認できました。、

つまり“行方不明”になっていることは事実です。
※進路の確認ができていないというだけで、消息不明という意味ではないでしょう。

行方不明とはどういうこと!?

本当に行方不明になっているわけではなくて、進路調査をしても博士からの返答がない、連絡が取れなくなったというだけだと思います。。

仮に大学の進路部から「卒業後、いまどうしてますか?」なんて連絡がきても、私なら返事しませんね。(笑)

つまり、大学側が把握できずに「行方不明」になっているだけであり、それは『死亡(自殺)したわけではない』と考えるのが”普通”でしょう。

実際、私だって生きてますので。

とはいえ、私が大学院生時代にポスドクの人から「自殺した学生がいる」という話を実際に聞いたことがありました(私の直接の知り合いではないため、詳細は不明ですが…)。

また、関東の某大学では毎年自殺者が出ているという噂もあるようです。。
※本当かどうかは定かではありませんが…。

自殺までは追い込まれないにしても、博士課程の学生で“鬱”を発症するケースは少なくありません。

博士学生は精神的に追い込まれやすい…

これは大学院博士課程を経験した人であれば心当たりがあるはず。「博士課程の学生が急に大学へ来なくなり連絡が取れらくなった」というケースは少なくありません。

私自身も似たような状況になった時期があったし、実際にそうなった先輩や後輩もいました。

こうした現場を実際に見ているからこそ「100人が博士の村」の中で語られる「8%が行方不明 or 死亡」という説を完全に否定できないんですよね。。

でも、本当に自殺まで追い込まれているとすれば、大変です。今すぐに大学院博士課程の研究環境を改善するできだと思います。

そこで、次は警察庁が報告している自殺者数を参考に、8%の行方不明の博士たちが自殺している可能性について考察してみます。

日本の自殺者数は20,000人以上(2019年)

データ引用元:警察庁自殺統計原票データ

こちらは、2010年から2019年の年間自殺者数を年齢階級別に表記したグラフです。

グラフを見てわかる通り、自殺者数は年々減少傾向にあるものの、2019年の自殺者数は”20,169人”という集計データが報告されています。

自殺者数は経済ショックが起きた翌年に急増すると言われており、その後10数年かけて減少傾向を示す特徴があるようです。

さて、「博士が100人いる村」の8%の行方不明の博士たちはこのデータに含まれるのでしょうか。。

平成31年度の博士課程修了者数は15,578人、このうち8%が調査報告書に含まれていない1,090人の博士たちとなります。

➪ 15,578人 × 7% = 1,090人

もし、「博士が100人いる村」の童話が真実であれば「年間自殺者数の5%が博士」ということになります。

この数字だけ見ると、真実味を感じてしまうのはなぜだろう…。

とはいうものの、博士卒の平均年齢は28歳~30歳くらい。

データから28歳~30歳の自殺者数を算出
  • 20~29歳の自殺者数:2,526人
  • 30~39歳の自殺者数:3,426人

→ 20~39歳の自殺者数5952人であり、平均分布していると仮定すると、28~30歳の自殺者数は893人

※算出例:5,952÷20×3 = 892.8

つまり、約893人の28~30歳の人が自殺していると推測されます。

とはいっても、この中に博士がどれだけいるかわかりませんので、1つの仮定を考えます。

【仮定】博士出身者の割合は各年齢別人口数の0.3%以下
 ➥ 893×0.3%=2.7人

上記の仮定を基に計算すると、2019年の自殺者数:20,169人のうち、2~3人が博士である可能性が考えられます。

【結果】博士の自殺者数は年間2~3人(推測)
 ※28~30歳の0.3%が博士と仮定した場合

つまり「博士が100人いる村」の童話で語られた”8%が行方不明・自殺者”という話には具体的な証拠がなく“誇張した表現”であることがわかりました。

やっぱりデマだったんですね。ホッとしました。

ただし、自殺者がいないわけではありません。

また、自殺まで追い込まれないにしても、精神的に病んでいる博士が多いことは事実です。

「博士が100人いる村」で語られる最後のオチは信ぴょう性がないデマだとしても、博士課程に在籍する学生の不安を具体的に捉えた動画であることは間違いありません。

それゆえに、製作者不明にもかかわらず製作後何年たっても大学院生の間で話題になているのでしょう。

まとめ:博士課程修了者の8%は自殺していない

年齢階級別の自殺者数と照らし合わせて「博士がいる100人の村」の真実を考察してみても、この動画がまったくのデタラメであるとは完全に否定できない気持ちが残ります。

その理由は、私自身が博士課程を経験しその過程で苦しんだり、時には“鬱”状態を彷徨った時期があったため、他人事として考えられないからです。

博士経験者であれば、多くの人は共感する部分があるはず。

ただし、“自殺”というの事実はないにしても「学校基本調査」で集計きていない7~8%が存在していることは事実です。

現在、大学院博士課程に在籍中、もしくはこれから博士課程に進学しようと考えている人であれば、自分がこの7~8%に入ってしまわないか、という不安があるかもしれません。

その可能性はゼロではないでしょう。

大学院で研究一筋で頑張っていると、その頑張りが報われなかったり、急に糸が切れたようにやる気がなくなったり、さらに“鬱”状態になってしまうことも珍しくありません。

その様な状況に陥らないためにも、研究者としての進路とは別の選択肢を複数持っておいたほうがいいです。

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