- 学振に採用されなければ研究者を続けるのは難しい…。
- 学振は”投稿論文”の有無で採用されるか否かが決まる。
- 博士1年次の学振DC1の自己評価でアピった結果、落ちた…
博士課程のみなさん、もしくは博士課程へ進学を目指す修士学生のみなさん、学振の申請準備はできていますか?
まさか、「学振?なにそれ?」っていう人はいないと思いますが…。
もし「学振なんて知りません…」という人がいれば、博士としてちょっとマズいかも。もしくは、所属する研究室の環境が良くないのかも…。
学振に採用されるためには、その人の実績となる投稿論文が必要になります。
※論文が出ているか否かは審査に大きく影響します。
しかし、博士学生が論文が書けるか否かは、指導教員次第かも。。
研究室によっては学振に採用されない?
私は、大学院博士課程3年目で物理学博士号を取得し、某大学研究機関に任期5年のポスドクに就きました。
学位取得時の研究実績は以下の通り。
✓査読付き論文1本
✓国際学会研究会:3回参加
✓国内学会・研究会:計10回くらい参加
ちなみに、大学院博士の頃にDC2は2度申請して2度不採用でした。
※申請時は論文が出ていませんでした。
学振DCは査読付き論文があるか否かでほぼ決まる
大学院生が申請する学振DCには、以下の様な趣旨があります。
1. 学振の趣旨
優れた若手研究者に、その研究生活の初期において、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与えることは、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者を育成する上で極めて重要なことです。
このため、独立行政法人日本学術振興会(以下「本会」という。)は、我が国の大学院博士課程在学者で、優れた研究能力を有し、当該大学で研究に専念することを希望する者を「特別研究員-DC」に採用し、研究奨励金を支給します。
つまり「優秀な博士学生には国から研究奨励金を出します」ということ。簡単に言えばお給料です。
なお、学振にはDC1とDC2があり、申請期間や採用期間がちょっとだけ異なります。
特別研究員DC1
- 申請時期:修士2年次
- 採用期間:博士課程の3年間
- 奨励金:月額20万円(+年間150万円の研究費)
特別研究員DC2
- 申請時期:博士課程
- 採用期間:博士課程の2年間
- 奨励金:月額20万円(+年間150万円の研究費)
※詳しい申請条件などの詳細は採用募集要項(2021年度版)でチェックしてみてください。
月額20万円もらえれば新卒社会人とほぼ同等です。
そのため、学振に採用されるか否かで「博士課程での研究生活の命運がほぼ決定する」と言っても過言ではありません。
仮にDC1に採用されると、博士課程1年次~3年次まで合計720万円(+450万円の研究費)が与えられます。
合計720万円+450万円の研究費!
とはいえ、もし採用されなかった時のことを想像してみてください。。
自分は学振に採用されずに奨学金を借りて日々極貧生活で研究している一方、同級生は月20万円+年間150万円の研究費でPCやiPadなどを購入し放題。
こんな状況で冷静に研究を続けられるわけがありません。
経済的な不安があると精神的に不安定になりやすく、研究に支障が出てきます。
本来の実力を発揮できないまま、博士課程3年間を不本意な形でやり過ごしかねません…。
簡単に解説します。
学振の申請書には以下の4項目があります。
✓現在までの研究状況
✓これからの研究計画
✓研究業績
✓自己評価
この中で大きな分量を閉めるのが「これからの研究計画」です。
しかし、審査に最も影響するもは「研究業績」です。さらに言えば、“査読付き論文数の数”が採用の決め手となります。
おっしゃる通り。
※天才級に優秀な学生はいるかもしれませんけど。
※大きい声では言えませんが、、研究室(指導教員)によっては学振を見越して自分の研究室のお気に入り学生の業績作りをする教授もいるのです。なぜそんなことするの?それは… ご想像にお任せします。
研究業績は、研究分野によって業績を作りやすい(短期で論文が書ける)分野と、業績を作り難い(長期でしか論文が書けない)分野があります。
📝研究業績を作りやすい分野(学振に有利)
- 短期的な現象、突発的な現象の観測や実験が必要な分野
- コンピュータシミュレーションによるデータ解析がメインの分野
➪ 短い期間(1~2年)で論文にできる
📝研究業績を作り難い分野(学振に不利)
- 長期的な現象の観測や実験が必要な分野
- 物を作り出す開発分野
➪ 論文化するには3~5年が必要
このように、研究業績が作れるかどうか(査読付き論文が書けるかどうか)は、本人の能力だけではなく、専攻した研究分野・研究対象によっても大きく左右されるのです。
そのため、”学振に採用させる研究分野には偏りがある”ことは間違いありません。
※現在は状況が変わっていたら申し訳ございません。。
学振DCに採用されるには指導教員の協力が必要
学振に採用されるためには、かなり早めの準備が必要になります。
それこそ、DC1を狙うのであれば、学部4年生のころから“査読付き論文”を出すことを意識した計画を進めなければなりません。
なぜなら、DC1の申請時期が修士2年次(5月?)のため。
つまり、大学院に入学して13ヵ月以内に、査読付き論文が“Accept”されている必要があります。
修士1年の11月までに論文を書ける!?
はい。。
ぶっちゃけ、無理です。
どんなに優秀な修士学生でも、学生の努力でどうこうなる問題ではありません。
ただし、以下の条件が揃えばDC1に申請できる可能性が見えてきます。
📝DC1に採用されるための条件(環境)
- 大学4年の卒業研究テーマがサイエンス的に価値がある。
- 卒業研究テーマを1年でまとめられる(結果がでる)テーマである。
- 指導教官が積極的に面倒を見てくれる、かつレスポンスが速い。
- 指導教官以外にも博士の先輩やポスドクが身近にいる。
- 英語が得意である。
つまり、難易度高いうえに、運の要素が大きい。。
こうした環境が揃ってようやく大学院修士課程の11月頃に論文投稿がぎりぎりできるかもしれない…という状況になります。
≫大学院で教授と合わない(or 嫌われている)と感じた時の対処法
※教授とそりが合わなければ最悪です…
※大きい声では言えませんが、、研究室(指導教員)によっては学振を見越して自分の研究室のお気に入り学生の業績作りをする教授もいるのです。それは博士に進学してほしいから。学振に採用されればお金の心配はないため進学を前向きに検討できるため。なぜ進学させたいの?それはその学生が優秀であるため。もしくは… ご想像にお任せします。
もしろん、DC1を申請するために「査読付き論文」が研究業績にあることが必須条件ではありません。しかし、学振に採用されるためには「査読付き論文」がほぼ必須です。
参考までに
以下の研究実績があれば学振に採用される可能性は極めて高いと思われます(あくまで私の感覚になりますが…)。
✓DC1は査読付き論文1本
✓DC2は査読付き論文が2本
※残念ながら、肝心なのは論文の質ではなく本数です。
ちなみに、DC1、DC2ともに「査読付き論文」が業績にない院生で学振に採用された人を私は見たことがありません(聞いたこともありません…)。
博士1年次のDC2の自己評価でアピった結果、落ちた…
私は博士1年目と2年目に学振DC2を申請しましたが、2度とも不採用となりました。その理由はおそらく「研究業績」に原因あり。
つまり、学振申請時には“査読付き論文”が出ていませんでした。
初めて論文がAcceptされたのが博士3年目の10月頃でしたので…。
学振申請前から「論文がなければ難しい」ということはわかっていたので、それならインパクトのある「自己評価」を書いて、めちゃめちゃアピってやろう!っと思いました。
その結果、、
さて、申請書の最後にある自己評価には以下の2項目について書かなければいけません。
📝自己評価に書く内容
- 研究職を志望する動機、目指す研究者像、自己の長所等
- 自己評価する上で、特に重要と思われる事項(特に優れた学業業績、受賞歴、飛び級入学、留学経験、特色ある学外活動など)
私はここでインパクトのあるアイディアとして“カフェの事業計画”を真面目に書きました!
ちなみに、指導教官にその内容をチェックしてもらうと、「この内容で申請書出しちゃうの?(笑)」』と苦笑いされました。。
でも、かなり正直に真面目に書いたので悔いはありません。今思い返しても、その当時の私のモチベーションの高さを感じます。
その内容を一部抜粋すると、こんな感じ。
目指す研究者像
「研究を通して得られた知識、経験、発見を一般社会に還元できる研究者」これこそが、私が目指す研究者像である。研究成果を論文や学会を通して報告していくことは研究職に従事する者の義務であり、その上で、一般の方々に対して研究を通して得た成果を還元していくことが、研究者としての社会における役割であると考えている。
当時の私は、「研究の財源は税金なので、研究者は国民の皆様へ研究で得た知見や技術を還元することが重要であり、研究者としての義務である」と考えていたんです。
世界は貧困問題や食糧危機、日本においては少子化問題など、様々な社会問題を真剣に考えなくてはいけない状況の中で、研究者は税金から賄われる有限の財源を使わせてもらっている立場にあり、その感謝と責任を持つべきだと。
実際に研究現場にいると、莫大な資金が使われていことに驚きます。
その財源が国民が納めている税金であることを、研究者は忘れがちです(というか、研究者は意識していない…)。
それは研究者として、とても“愚かだ”と考えていたわけで、「研究者は自身の活動の成果を国民に還元する義務がある!」という主張を申請書を通して誰かに訴えたかったのだと思います。
さて、当時の志高い博士時代に書いた学振申請書の「自己評価」をnoteに綴っておりますので、ご興味あるかたはどうぞ。
≫自己評価を真面目に書いてみた件
以上です。
ではまた。

※研究者になっても給料に期待してはいけません。